世間を味方につける

今日は私の相棒のお話。治療の大きな後遺症で体が不自由な私は毎日のリハビリが欠かせない。そのリハビリの一つがワンちゃんとの散歩である。トイプードルで男の子、名前は「のぞみ君」。今6歳。勢いと落ち着きが備わって充実した時期である。

 

夕方になると、のぞみ君は机に向かう私に飛びついてくる。「散歩の時間だよ」と催促してくる。いつも同じ時間だ。毎日ほぼ1時間。花の咲く遊歩道や静かな公園や並木道を、のぞみ君はその日の気分でコースを決めて力いっぱい引っ張ってくれる。犬を散歩させるのではなく、「のぞみ君に散歩をさせてもらう」という仕掛けだ。

 

時には下校中の女子中学生の集団とすれ違うと、「わぁ、かわいい」と駆け寄ってくる。「名前、何ていうんですか」「のぞみ君」「えぇ!? 私とおんなじ名前だぁ」みんなで笑って騒いでいる。私が一人で歩いていたらこんな光景には出会わない。のぞみ君が作ってくれた新しい世界である。

 

複数ある散歩コースはどれも芝生のある大きな公園が目的地になっている。ここへ行くと、草や土などの大地とふれあえるし、たくさんの犬仲間と会えて、「のぞみ君、元気だね、よしよし」と飼い主さんたちに可愛がってもらえる。のぞみ君はそれを知っているので、早くその公園へ行こうとして近道をしようとする。

 

『リハビリの ために始めた散歩道 なぜか近道 選んでしまう』これではリハビリ散歩にならない。そこで、正規のルートを行こうとするが、のぞみ君は一度決めたら譲らない、動かない、力も強い。お互いに「こっちだよ」と引っ張り合いが始まる。それが下の写真である。のぞみ君は公園への近道である写真の右側へ行こうとしている。両手を広げて踏ん張って横目で私をにらんでいる。

 

どう見たって私がワンちゃんをいじめているようにしか見えない。信号待ちで止まった車の中ではみんな笑っている。拍手をしている人もいる。自転車で通りかかったおじいさんは、「ワンちゃん、頑張れ!」と無責任に声をかけていく。

『世間をば 味方につける この態度』のぞみ君は一瞬にしてすべての人を味方につけてしまうのである。したいことや欲しいものはどんなことをしても手に入れる。イヤことは絶対にイヤ。鮮やかで清々しい生き方である。

 

本能で生きる--。のぞみ君に教わったこだわりである。そろそろ飛びついてくる時間だ。今日はどんな出会いがあるだろうか、楽しみである。(小風)

 

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